剣道の稽古「切り返し」の重要ポイントを徹底解説!基本の集大成を身につけろ!

剣道で一番初めに身につける約束稽古であり、最も重要な稽古である「切り返し」。切り返しが上達することが、剣道の基礎力アップに繋がります。
ただ、初心者にとっては難しい、中上級者にとっては漫然とした稽古になりがちです。

上手くできないなぁ。。



もっと切り返しのレベルを上げたい!
そういった剣士のために、切り返しを理屈も踏まえて、重要ポイントとレベルアップの秘訣をお伝えします。
意外とできていないことや、課題解決のヒントも含まれていると思いますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
- 切り返しの重要ポイント
- 正しい切り返しの方法
- 切り返しのレベルアップする方法
- 切り返しを学んでいる剣道初心者の方
- もう少し稽古の質を上げたい中上級者の方
切り返しの構成要素
切り返しを分解すると以下で構成されています。
- 構え
- 遠間から一足一刀の間合いへ仕掛けて面打ち
- 体当たり
- 前進左右面打ち4本
- 後退左右面打ち5本
- 縁を切らずに面打ち
- 残心
ちなみに「剣道学科審査問題例と解答例」には以下のように記載されています。
一足一頭の間合から最初に正面を打ち、直ちに前進しながら左右面を4本(左ー右ー左ー右)、後退しながら5本(左ー右ー左ー右ー左)打ち、その後、後退しながら間合をとって一足一刀の間合から正面を打つ。これを1回として、通常は2回行う。また、錬度によって左右面の本数は、元立ちの指導によって行う場合もある。
各要素の注意点


分解した各要素ごとに注意点があります。1つ1つ区切って、ポイントを解説します。
構え
剣道で最も重要で最も奥深いのが構えです。基本の段階では、姿勢、竹刀の握り、拳の位置を中心に確認しましょう。
構えだけで説明がたくさん必要なので、以下の記事にまとめています。参考にしてみてください。


遠間から一足一刀の間合いへ仕掛けて面打ち
遠間、すなわち、そのまま打ち込んでも届かない間合いでしっかり発声します。気力を充実させて、一足一刀の間合い、すなわち、一足出せば届く間合いへ攻め入り、面を打ちます。
この時の攻め入り、仕掛けも調子を取って間合いに入るのではなく、試合のつもりで相手の間合いに入り込んで中心をとります。
強い選手はこの部分を非常に大事にしています。意識をして間合いに入りましょう。そして、面打ちは打ち切るつもりで捨てて面を打ちます。
体当たり
「打ち切るつもりの面打ちだったけど、相手がいるから体当たりをする。」
これくらいのつもりで、体当たりをします。
体当たりをするからといって、相手への接近するスピードを下げては稽古になりません。打ち切るつもり、相手を吹き飛ばすつもりで体当たりをしましょう。
ただし、道場や指導によっては体当たりをせず、「伸び面」をする場合もあります。



警視庁のアップは伸び面ですね!
自分の道場の方法に従って取り組むようにしましょう。
前進左右面打ち4本
体当たりで相手を押し下げた後、相手の隙をついて、左右面打ちに移ります。
体当たりで下げた一瞬のタイミングで息を吸い、左右面打ちにより、相手を追い込むという流れです。
まず、左面を打ち込むと、相手が受けます。すると、相手の右面が空くので、すかさず打ち込みます。再び右面を防がれるので、空いた左面を打ち込む、といった理屈で左右面を打ち込むこととなります。
左右面打ちは注意点が多いので、よく気をつけましょう。
- 左拳を頭上まであげる
- 左右面の角度を45度にする
- 左右均等の強さで打ち込む
- 左手は常に正中線に置く
- 左足の引きつけ時に打ち込むようにする
- 竹刀があっても、面を打ち込むつもりで打つ
- 上下動せず、前進方向に動く
左右面打ちは、確実に正しくできるようになってから速く振ることが大切です。



私は大きく→速く→強くの順で身につけるように習いました!
慣れてきたり、竹刀に対しての打ち込みが習慣づいたりすると、これらのポイントが蔑ろになりがちです。面で受けたり竹刀で受けたりを織り交ぜながら、基本を守るようにすればレベルアップが望めます。
また、上級者でよくある悩みとして、右面(自分からみて左側の面)を打ち込む時に、打突力が弱くなってしまうことがあります。
この悩みの解決方法は剣道Youtuber「けんしくん」が解説をしています。
基本は「左手は正中線上」ですが、左手をやや右側に持ってくることで、打突力が向上します。



正中線から外れて本当に良いの?
こういった不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、実際の打突の場面だと、相手の面に打ち込むため、そんなに大きく外れることはありません。
ぜひ一度試してみましょう。
後退左右面打ち5本
前進で左右面を打った後、相手が前進してくるので、後退しながら左右面を打ち込みます。後退しているものの、下がりながら攻めは続いているイメージです。ですので、途中で息継ぎをする間はありません。
後退する時は以下の点に注意しましょう。
- 歩み足にならないこと(右足の引きつけ時に打突すること)
- 歩幅が小さくならないこと
特に2点目は陥りがちです。前に進むよりも後に下がる方が慣れない動きのために、意識的に大きく下がるようにしましょう。
縁を切らずに面打ち
左右面の最後の左面を打って、間合いを取ります。ただ、相手は前進してきたため、このまま気を抜くと相手に打ち込まれてしまいます。
なので、気を抜くことなく相手の攻めを許さず、打てる間合いに入る、もしくは打てる間合いならばその場から面を打ち込み、終始相手を圧倒します。
この流れから分かる通り、体当たりの後に息を吸った後、その後に息を吸う機会は無く、最後の面打ちまで息を繋ぐこととなります。
この面打ちができるようになると、試合の場面で相手との打ち合いとなっても、最後に自分の技で相手を制すことができます。
残心
2往復の切り返しを行う場合は再び体当たり、左右面打ちと続きます。そして、最後の面打ちですが、この面打ちが最後の集大成の1本です。この面をしっかり決めるために打ち切ります。
ただ打ち切った後も気を抜く瞬間はなく、振り返る際も追撃を許さないように身構えと気構えを示し、残心を示します。
剣道学科審査問題例と解答例に記載の「切り返しで気をつけること」
- 立合いの間合いでは、姿勢、構え、竹刀の握り方などを正しくする。
- 初心の段階では、動作を大きく、正確に行う。
- 肩の余分な力を抜いて、柔軟に左右均等に打つ。
- 連続左右面打ちの角度を45度ぐらいにする。
- 正しい足さばきで行い、特に後退の際の引き足が歩み足にならない。
- 振りかぶったときに、左こぶしを必ず頭上まであげる。打ちおろしたときには、左こぶしがさがり過ぎたりあがり過ぎない。
- 左こぶしは常に正中線上にある。
- 息のつなぎ方は、正面を打ち、相手に接近したところで息を吸い、左右面を打ち終わって間合をとり、正面を打ったところで息をつぐ。
- 相手の竹刀のみを打ったり、空間を打ったりすることなく、伸び伸びと確実に左右面を打つ。
- 頭や腰、膝などで調子をとって体の上下動を大きくしない。
- 正面打ちは、一足一刀の間合から正確に打つ。
- 習熟するにつれて、旺盛な気力をもって息の続く限り一息で行い、体勢を崩さずに連続左右面を打つようにする。
受け手の注意点


打ち手の注意点を踏まえた上で、受け手も意識することがあります。切り返しだけでなく、全ての剣道の稽古で共通することですが、受け手の役割は「打ち手に気持ち良い体験をさせる」ことです。正しい打ちができると、打ち手は気持ちよく感じます。
それを踏まえて、切り返しで特に重要なポイントを挙げます。
間合い
切り返しは前進と後退の動きを伴った打ち込み動作です。そのため、相手との距離、間合いを保つのが難しいです。
受け手は打ち手が正しく打てるように、間合いを保って受けることが重要です。
初めのうちは難しいので、左右面を面で受ける場合、受け手は竹刀の剣先を相手の臍や腰の位置につけ、間合いを一定に保つようにしましょう。間合いの感覚が身につくはずです。
左右面の受け方
竹刀で受ける場合、受け方によって相手が気持ち良い体験ができるかどうか変わってきます。
具体的には、左手を腰の位置に持ってきて受けるようにしましょう。そうすることで、竹刀の「ものうち」の位置で相手の打ちを受けることができます。
初心者の間は、相手の左右面に合わせて、左手を左腰、右腰につけて受けるよう指導されることもあります。左拳は腰、と決めることで、竹刀で受ける高さを変えずに安定して受けることができます。
ただ、上級者は左手を正中線に置いて、左右面を受けるようにしましょう。もし、相手が左面から右面へ打ち込む際に油断があるのならば、左面を打ち込んだ後は打つべき機会です。なので、左手を正中線に置いておくことで、その機会を逃さずに技を出すことができます。
実際の切り返しの稽古で受け手が技を出すことはありませんが、実戦をイメージして、打ちこめる準備はしておきましょう。受け手も気を張ることにより、緊張感のある切り返しができあがります。
剣道学科審査問題例と解答例に記載の「切り返しの受け方で注意すること」
- 受け方は、引き込む方法と打ち落とす方法があるので、掛かる者の技能を認識する。
- 連続左右面打ちは歩み足で受ける。竹刀を垂直にして、左こぶしの位置は腰の高さ、右こぶしの位置はほぼ乳の高さにし、両こぶしが上がり過ぎないようにする。
- 気を張って(気を入れて)合気となり、大きな声を掛けて相手を引き立てるようにする。
- 左右面打ちは、左面から打ち始めて左面打ちで終わるように習慣づけ、正面打ちも正確に打つようにする。
- 前進と後退の両方を必ず行う。
- 最後の正面を打った後は残心を示す。
切り返しの目的と効果
以上の取り組みができるようになれば、以下の目的を果たし、効果を得ることができます。「剣道学科審査問題例と解答例」には次のように記載されています。
切り返しは、剣道の姿勢と構え、打ちの刃筋や手の内の作用、足さばき、間合のとり方、呼吸法、さらに強靭な体力や旺盛な気力を養い、気剣体一致の打突の修得を目的とする。
- 身体能力の向上、身体の柔軟性
- 体の運用、足さばきの敏捷(びんしょう)性
- 正しい刃筋と打ち方、手の内の修得
- 呼吸法の修得、肺活量の増大
- 筋力の強化、精神力の強化
- 気剣体一致の打突の修得
- 準備運動や整理運動として活用実施することにより、身体の調整を行うことができる。



正しい形、レベルの高い取り組みをして、これらを身につけましょう!
まとめ
今回は、切り返しの理屈も踏まえて、重要ポイントやレベルアップの方法をお伝えしました。これを徹底すれば、確実に剣道の基礎力がつくはずです。
慣れてくるとどうしても良い加減になってくる部分もあるので、この記事を読み返して、見直していただけたらと思います。
五段以下の方は、これらの内容は学科試験の内容と被っているので、普段の稽古で意識することが学科試験対策にもなります。
正しい切り返しを身につけて、さらに強くなりましょう!
以上、ケンドーショーダンでした。