剣道の「有効打突」とは?学科試験の答えを解説!
1本になる「有効打突」とはどんなものでしょうか?
バコーンって当たった技ですよね!
見た目はそんな感じですよね!
でも、それを学科試験の答えに書けますか?
うー、それは書けないな、なんて書けばいいんだろう?
昇段審査で『「有効打突」について説明しなさい』という問題が出ることがあります。
剣道を始めて、試合にも少し出るようになって、一本が取れた方も多いでしょう。でも、なんで1本になった?なんで旗が上がった?のか、理由をちゃんと言葉で説明できますか?
有効打突の理由をきちんと頭で理解できると、自分の1本に自信を持つことができます。
有効打突には条件や基準があります。今回はその条件を解説したいと思います。
頭でも体でも1本になる打突、技を理解して、普段の稽古に取り組みましょう!
- 有効打突の条件
- 1本の見極め方
- 初段を受験の方
- 審判をする方
- 1本を取れなくて悩んでいる方
有効打突の条件
全剣連書庫の中に、「剣道試合・審判・運営要領の手引き」があります。
こちらのP6,7で文章でも図解でも解説されています。
イラストをピックアップすると以下のようになります。
いや、イラストといっても文字ばっかりじゃん。
結局、どう覚えれば良いのよ??
まずは、大枠を捉えましょう!
「要素」と「要件」と「残心」です。
特に重要なのは、「要件」と「残心」です。
「要件」と「残心」は、剣道をする方全員、段位に関わらず理解しておくべき内容となっています。
まずは、「要件」と「残心」の内容を見てみましょう。
有効打突の要件と残心
「要件」と「残心」だけで、『有効打突の条件』と示されることも多いです(試合審判規則第12条)。
文章で示すと、こちらのようになります。
「充実した気勢」「適正な姿勢」をもって「竹刀の打突部」で「打突部位」を「刃筋正しく打突」し「残心あるもの」
(以下では、「要件」と「残心」について、「要件」とのみ表記します。)
すなわち、要件は次のように分解できます。
- 充実した気勢
- 適正な姿勢をもって
- 竹刀の打突部で
- 打突部位を
- 刃筋正しく打突し
- 残心あるもの
これら6条件を揃えれば1本となります。この条件はしっかり暗記ましょう!
有効打突の「要件」の詳細
で、結局どう覚えるの??
ただただ暗記するのも良いですが、実際の1本をイメージすると覚えやすいです。
そして、視点を「自分」から「相手」の方向へ視点を移すことで覚えやすくなります。
- 充実した気勢
→メン、コテ、ドウ、ツキとはっきり発声することで、気が充実します。 - 適正な姿勢をもって
→崩れることなく正しい姿勢で打ち込むことが重要です。 - 竹刀の打突部で
→竹刀の「もの打ち」で打ち込みます。 - 打突部位を
→面、小手、胴、突きの正しい位置に打ち込みます。 - 刃筋正しく打突し
→「竹刀を振る向き」と「刃の向き」を同じ方向としましょう。 - 残心あるもの
→打ち終わった後も、身構え・気構えを相手に示しましょう。
1から6にかけて、視点が自分から相手へ向かっていくのがわかるでしょうか。
見るべき場所がわかると、ずいぶん覚えやすくなるはずです。
これら6条件を満たさない限り、どんな技でも1本とはなりません。
特に審判をする人は、絶対に覚えておかなければならない内容ですので、この覚え方を使って暗記してください。
有効打突の要素
続いて「要素」です。
「要件」は1本のために絶対の必須条件と先ほど説明しました。
1本の技は言うなれば、「要件」が骨格、「要素」が肉づけとなります。
すなわち、「要件」は揃った上で、加えて「要素」が十分かどうかで1本の判断がなされます。
また、この「要素」は試合者によって必要な程度も変わってきます。
剣道始めたての小学生の子の1本と、全日本選手権の決勝戦での1本と、いずれも「要件」を満たしていますが、「要素」には大きな違いがあります。
ここは、審判の技量が問われるところでもあります。
今の打ちは旗を上げなかったけど、なんで?
と第三者から聞かれても
『1本の要件』を満たしていたけど、『要素』の『強さと冴え』が不足していたと思います!
と言ったように、きっちり言語化できるようになりましょう。
有効打突の「要素」の詳細
さて、「要素」の中身を一緒に確認していきましょう。こちらも「要件」のときと同様に、実際の1本をイメージしましょう。
- 間合い
- 機会
- 体捌き
- 手の内の作用
- 強さと冴え
- 間合い
相手との距離です。近間で打ち込んでも1本となりにくいのは「適切な間合い」でないためです。 - 機会
剣道には「打突の好機」があります。相手が居ついたところ、打とうとするところなどに打ち込むと1本となりますが、相手の気が十分な時に打ち込んでも、1本にはなりません。 - 体捌き
打ったとき、打った後に体が捌けていなければなりません。その場で打っても1本になりにくいです。 - 手の内の作用
手のひらの作用のことを指します。手の内が効くと、効率の良い鋭い打突ができます。 - 強さと冴え
打突部位に「当てる」だけではダメで、「打た」なければ1本になりません。また、打つ瞬間だけに力を加えることで、「冴え」が生まれます。
三段以上くらいを受験される方は、こちらの要素についてもしっかり頭に入れておきましょう。
よく試合後の場面でこのような声を聞くことがあります。
途中のメン、絶対1本だったじゃん、、なんで審判は旗上げないの?
こういった不満の大半は、「『要素』の不足」が原因であることが多いです。
基本打ちの段階から、「要素」を十分満たした打ちの稽古をしましょう。
特別な1本?「玄妙な技」とは
さて、今まで説明してきたように、剣道の1本は「要件」と「要素」から成り立っています。
ただし、要素が一部不足していても1本となることがあります。
それが「玄妙な技」と呼ばれるものです。
「玄妙」の言葉の意味は次のとおりです。
道理や技芸などが、奥深く微妙なこと。趣が深くすぐれていること。また、そのさま。「―な教理」「―な思想」
goo国語辞典
私の経験だと、上で述べた要素のうち、「間合い」「機会」「体捌き」が特に優れている時に、「玄妙な技」と称されることが多いです。
特に、素晴らしい擦り上げ技などが当てはまります。
「玄妙な技」は狙って出すというより、自然と体が動いて、結果的に技となることが多いように感じます。
日頃の稽古の成果が無意識で出たということですね。
ふとした瞬間に「玄妙な技」が出せるように、普段から多彩な技を使いましょう。
※昇段審査の学科で「有効打突の条件」に問われても、初段レベルであれば、玄妙な技については特に言及しなくても大丈夫です。
まとめ
今回は「有効打突の条件」について解説しました。
有効打突は、「要件」と「残心」と「要素」から成り立っています。
「要件」と「残心」は以下で表現されます。
- 充実した気勢
- 適正な姿勢をもって
- 竹刀の打突部で
- 打突部位を
- 刃筋正しく打突し
- 残心あるもの
「要素」は以下です。
- 間合い
- 機会
- 体捌き
- 手の内の作用
- 強さと冴え
今回の内容は、「学科試験の答え」としてでなく、剣道競技者ならば全員知っておくべき内容となっています。
試合をする場合も、審判をする場合も必須の知識ですので、頭に入れておきましょう。
以上、ケンドーショーダンでした。