【四・五段審査】日本剣道形「小太刀」1〜3本目の動き方とポイントを解説!
日本剣道形は全部で10本の形があります。
1〜7本目では太刀、8〜10本目では小太刀を扱います。多くの都道府県では四段以上の昇段審査で10本目まで全ての形を行うこととなります。
剣道の実戦(実技)で小太刀のみで戦うことはありませんので、全ての人が剣道形を通じて初めて小太刀を学ぶこととなります。
日本剣道形を通じて小太刀を学び、剣道の理解をより深めていきましょう。
今回は、8〜10本目、すなわち、小太刀の1本目〜3本目の動き方やポイントを紹介していきます。
形をまず覚えてからの方が、理合が頭に入りやすいです。きっちり動き方をマスターしましょう。
前提として知っておくべき小太刀のポイントは以下の記事でも紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。
それでは詳細を見ていきましょう。
- 日本剣道形の小太刀1本目・2本目・3本目の動き方とポイント
- 日本剣道形の小太刀1本目・2本目・3本目を学びたい方
- 四段以上の受験を控えている方
- 四段受験者を教える先生
YouTubeチャンネルの「剣道昇段塾」では、日本剣道形や学科を解説しています。こちらもご参考にしてください。
日本剣道形小太刀1本目
打太刀の動き
- 左足を前に出して、左上段に構える。
- 左、右、左の順で足を出して大きく3歩前進し、右足を前に出して、面を打つ。
- 相手の残心を見届けてから、ゆっくり剣先を上げて中段に構える。
- 左足から元の位置に戻る。
打太刀のポイント
左上段からの面打ち
左上段をとり、面打ちをする動き方は、基本的には「日本剣道形太刀1本目打太刀」と同じです。
左上段は相手に自分を大きく見せるように、構えます。そして、斬り合う間合いに入るよう大きく3歩前進します。
切る時は相手の頭から足まで一刀両断するように、大きく切り込みます。
改めて1本目打太刀を見直しましょう。
面を打つ機会
日本剣道形太刀1本目打太刀と違う点はここです。
小太刀1本目(8本目)の面を打つ機会は「入身となるところ」と表現されています。
入身ってなに?
入身は、「相手の右肩や刀が正中線に近づく姿勢」「半身になろうとする姿勢」のことを指します。
相手がこの姿勢に近づくタイミングで面を打つこととなります。
そう言われても、よくわからないよ。。
そういう方は歩み足で3歩前進する流れで、面を打ちましょう。最後の一歩を相手と合わせて進むと、自然と相手は入身の体勢となります。
逆に前進した3歩目で一度止まり、間を取ってから面を打つのは、太刀1本目では正しいですが小太刀1本目では間違いです。
太刀1本目と小太刀1本目の違いを理解しましょう。
仕太刀の動き
- 右足を前に出して剣先をやや高く構えて、半身の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進します。
- 相手の面に対して、右足を右前に出しながら、左鎬で受け流して面を打つ。
- 左足から1歩下がり、右手を頭上に持っていき、残心を示す。
- 相手が剣先を上げ始めたら刀を下ろして中段に構えます。
- 左足から元の位置に戻ります。
仕太刀のポイント
上段に対して半身の構え
小太刀の構えは半身となります。右足を前に出すことで、右肩を前、左肩を後とすることで半身となります。
上段に対する場合は、小太刀の剣先を相手の顔の中心に持ってくるように構えましょう。
受け流し面
打太刀のところで説明した通り、入身になるところで相手は面を打ってきます。
相手の面に対し、右前に開いて相手の打ちを受け流しましょう。
受け流す際は、親指と人差し指で木刀を持ちます。木刀を真横にして「受け止める」のではなく、小太刀の剣先を左後方に向けることで受け流しましょう。
残心
相手の面を打った後は、右手を頭上に上げて残心をとります。(ここでは相手の顔の中心に剣先をつけません。)
小太刀が斜めにならないように、真っ直ぐ振り上げて残心を示しましょう。
日本剣道形小太刀2本目
打太刀の動き
- 剣先を下ろし、下段の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- ゆっくり剣先を上げる。
- 剣先が相手の小太刀に触れそうになるギリギリで、右足を下げて剣先を後ろにもっていき脇構えをとる。
- 右足を前に出しながら、左拳を頭上に上げて振りかぶり相手の面を打つ。
- 左足から元の位置に戻る。
打太刀のポイント
刀を脇にとる機会
下段から刀を徐々にあげて、相手の小太刀に触れそうになるギリギリのところで右足を引き、刀を脇にとります。
なんでギリギリのタイミングなの?
打太刀は剣先をゆっくり上げて、相手に圧力をかけています。
しかし、このまま剣先を上げ続けてしまい相手の小太刀に自分の刀が触れてしまうと、相手は小太刀で刀を制して間合いに入ってきてしまいます。
打太刀は剣先を上げ続けられなくなり、どうしようもない状態から、剣先を後ろに下げて脇に刀をとることとなります。
このように、駆け引きを理解すると、動きも覚えやすくなります。
面打ち
脇構えの状態から面を打ちます。これは日本剣道形太刀4本目の仕太刀の動きとほとんど同じですね。
4本目の場合と同様、真っ直ぐ相手の面を打つようにしましょう。斜めに切らないように気をつけましょう。
真っ直ぐ振り下ろすことで、相手は受け流しやすくなります。
正しい動きをするからこそ、スムーズな形を作り上げられます。
仕太刀の動き
- 相手の下段に対して、中段半身で構える。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 相手が剣先をゆっくり上げるので、こちらはやや剣先を下げる。
- 相手が右足を下げると同時に、右足から1歩間合いを詰める。
- 相手の面に対し、左前に左足を進めて右鎬で受け流し、右足の引き付けと同時に相手の面を打つ。
- 腰につけていた左手で、相手の右腕を上から押さえる。同時に右手を右腰に持っていき、剣先は相手の喉に向ける。
- 右足から元の位置に戻る。戻る際、相手の腕から左手を離し、再び自分の左腰につける。
仕太刀のポイント
下段に対して半身の構え
1本目と同じく半身中段の構えとなります。右足を少し前に出して、右肩を前、左肩を後ろとして、半身の構えとなりましょう。
違う点は、下段に対して構えるというところです。2本目では剣先を相手の胸の高さとしましょう。
攻め合い
相手が徐々に刀を上げて攻めるのに対して、小太刀の剣先を少し下げて応じましょう。
相手は攻め気に耐えきれず、刀を後ろに下げます。そこに対して、すかさず一歩詰めて攻め入ります。
緊張感が必要となる場面ですので、相手に隙を与えないようにしましょう。
受け流し面
小太刀1本目と違い、小太刀2本目では左前に裁いて、受け流し面を打ちます。
受け流し方は1本目と同様、親指と人差し指だけで木刀を持って受け流すようにしましょう。
体の構造上、右に裁くよりも左に裁く方が難しいです。体に近いところで受け流そうとすると、刀が体に当たってしまうので、右手を真上に上げるイメージで受け流しを行いましょう。
上手く受け流せると、木刀のぶつかる音が高い音になるので、繰り返し練習してマスターしましょう。
相手の腕を押さえる
小太刀2本目は残心の際に、相手の腕を押さえます。
相手の打ち終わりに対し、再び刀を上げて反撃を許さないよう、相手の右腕をグッと下方向へ押さえましょう。
遠慮して力を緩めてしまうと緊張感が無くなってしまうので、相手の腕が上がらないくらいの力で押さえましょう。
日本剣道形小太刀3本目
打太刀の動き
- 中段のまま、右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 3歩目に相手の面を打つ。
- 相手に擦り落とされたら、その軌道で左足を前に出して相手の右胴を打つ。
- 相手に間合いを詰められて、右、左、右の順で足を下げて後退する。
- 相手が離れたら右足から元の位置に戻る。
打太刀のポイント
面打ちから胴打ち
前進する3歩目、すなわち、右足を出すタイミングで振りかぶって振り下ろします。
腕を伸ばして真っ直ぐ振り下ろしましょう。
相手も正面にいて、自分が下ろした木刀が頭にぶつかったら怖いなぁ。。
確かに相手の木刀の方が短いので、怖いと感じるかもしれません。
一方で、遠慮した面打ちでは相手も擦り上げにくくなってしまいます。
正しく大きく打ち込んで、形を行いましょう。
自分の面に対し、相手が擦り上げ・擦り落としたら、相手の右胴が空きます。
相手の力を利用してその流れですかさず、相手の胴を打ち込みましょう。こちらも理合がわかると、無駄のない動きができます。
仕太刀の動き
- 右足を少し出して、剣先を下げ、下段半身の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 相手の面に対して、小太刀を真上に上げて相手の刀を擦り上げる。
- 自分から見て左前に相手の刀を擦り落とす。
- 左足を前に出し、相手の胴打ちに対して刀を擦り流す。
- 右足を引き付けると同時に、刀を擦り込み、左手で相手の腕を押さえる。
- 右手、左手はその状態のまま、左、右、左の順で足を出して前進する。
- 右手を右腰にもっていき、剣先を相手の喉に向けて残心を示す。
- 剣先を相手に向けたまま、左足から下がって相手から離れ、元の位置に戻る。下がる時に相手から左手を離し、再び左腰に左手を戻す。
仕太刀のポイント
下段半身の構え
小太刀の3本目(日本剣道形10本目)は仕太刀から動き出します。
右足を少し前に出し、剣先を下げて半身下段の構えとなります。
どれくらい剣先を下げて構えるかは解釈が異なるところなので、およそ剣先が相手の膝の高さをイメージすれば良いです。
半身下段の構えの他に、「無構え」と表現される先生もいらっしゃいますね!
仕太刀から動き出すのを忘れないようにしましょう。
擦り上げ・擦り落とし
相手が大きく面を打ってくるのに対し、小太刀を真っ直ぐ上げて擦り上げましょう。
太刀で擦り上げる場合と同様で、ほぼ真っ直ぐ振り上げて相手の刀をなぞるイメージです。小太刀は短いので、刀を傾けて相手の刀を迎えると逆に危険です。
相手と合気になって擦り上げましょう。
擦り落としは、自分から見て左前の方向へ相手の刀を投げ飛ばすような気持ちで擦り落としましょう。
ここの擦り落としが不十分だと、相手が次の胴打ちへ移りにくくなってしまいます。右手の手首を利かせましょう。
擦り流し・擦り込み
左足を前に出して、相手の胴に対して擦り流しを行います。
この時、自分の刀は相手の刀に対して寝かせた向きで擦り流しを行います。
左足を前に出しつつ、自分の刀は相手の剣先方向へ動かすので、体は右へ開くこととなります。
そして、右足を引き付けると同時に擦り込みを行います。
擦り込みは、相手の刀の鎬に対して自分の刀の刃を立てる方向で行います。
鍔と鍔が交わるように擦り込むことで、自分の力を十分に相手に伝えることができます。
また、擦り込みの際に左手で相手の右腕を押さえます。
この時の押さえる方向は上方向です。
刀で相手の刀を下方向に押さえて、腕を上方向に押さえることで、相手の腕を使えないように固めてしまいます。
昔はしっかり上方向に腕を押さえることで、関節技を決めるようにすると教えられていたそうです。
今は、相手が痛く感じない程度にしっかり固めましょう。。
相手の動きを封じることで、残心までの動きにも緊張感を付与できます。
残心
相手の腕を押さえたまま、右手を右腰にもっていき、剣先を相手の喉に向けて残心をとります。
そして相手から離れるときは、前にある左足から下げて離れます。普通、形の足捌きは進行方向にある足から動き出しますが、この場面は例外です。
小太刀の3本目は相手に対して打ちを決めず、相手を生かしたまま勝っています。なので、相手から離れるときも今まで以上に縁を切ってはならない状況にあります。
相手の反撃をさせないよう気を残したまま相手から離れるため、剣先を相手に向けたまま前にある左足から下がるわけです。
これまで以上に、緊迫した雰囲気で下がるようにしましょう。
まとめ
今回は、日本剣道形小太刀の1本目・2本目・3本目を解説しました。
小太刀1本目の動きは以下の通りです。
- 左足を前に出して、左上段に構える。
- 左、右、左の順で足を出して大きく3歩前進し、右足を前に出して、面を打つ。
- 相手の残心を見届けてから、ゆっくり剣先を上げて中段に構える。
- 左足から元の位置に戻る。
- 右足を前に出して剣先をやや高く構えて、半身の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進します。
- 相手の面に対して、右足を右前に出しながら、左鎬で受け流して面を打つ。
- 左足から1歩下がり、右手を頭上に持っていき、残心を示す。
- 相手が剣先を上げ始めたら刀を下ろして中段に構えます。
- 左足から元の位置に戻ります。
小太刀1本目のポイントは以下です。
打太刀
- 左上段からの面打ち
- 面を打つ機会
仕太刀
- 上段に対して半身の構え
- 受け流し面
- 残心
小太刀2本目の動きは以下の通りです。
- 剣先を下ろし、下段の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- ゆっくり剣先を上げる。
- 剣先が相手の小太刀に触れそうになるギリギリで、右足を下げて剣先を後ろにもっていき脇構えをとる。
- 右足を前に出しながら、左拳を頭上に上げて振りかぶり相手の面を打つ。
- 左足から元の位置に戻る。
- 相手の下段に対して、中段半身で構える。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 相手が剣先をゆっくり上げるので、こちらはやや剣先を下げる。
- 相手が右足を下げると同時に、右足から1歩間合いを詰める。
- 相手の面に対し、左前に左足を進めて右鎬で受け流し、右足の引き付けと同時に相手の面を打つ。
- 腰につけていた左手で、相手の右腕を上から押さえる。同時に右手を右腰に持っていき、剣先は相手の喉に向ける。
- 右足から元の位置に戻る。戻る際、相手の腕から左手を離し、再び自分の左腰につける。
小太刀2本目のポイントは以下です。
打太刀
- 刀を脇にとる機会
- 面打ち
仕太刀
- 下段に対して半身の構え
- 攻め合い
- 受け流し面
- 相手の腕を押さえる
小太刀3本目の動きは以下の通りです。
- 中段のまま、右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 3歩目に相手の面を打つ。
- 相手に擦り落とされたら、その軌道で左足を前に出して相手の右胴を打つ。
- 相手に間合いを詰められて、右、左、右の順で足を下げて後退する。
- 相手が離れたら右足から元の位置に戻る。
- 右足を少し出して、剣先を下げ、下段半身の構えとなる。
- 右、左、右の順で足を出して大きく3歩前進する。
- 相手の面に対して、小太刀を真上に上げて相手の刀を擦り上げる。
- 自分から見て左前に相手の刀を擦り落とす。
- 左足を前に出し、相手の胴打ちに対して刀を擦り流す。
- 右足を引き付けると同時に、刀を擦り込み、左手で相手の腕を押さえる。
- 右手、左手はその状態のまま、左、右、左の順で足を出して前進する。
- 右手を右腰にもっていき、剣先を相手の喉に向けて残心を示す。
- 剣先を相手に向けたまま、左足から下がって相手から離れ、元の位置に戻る。下がる時に相手から左手を離し、再び左腰に左手を戻す。
小太刀3本目のポイントは以下です。
打太刀
- 面打ちからの胴打ち
仕太刀
- 下段半身の構え
- 擦り上げ・擦り落とし
- 擦り流し・擦り込み
- 残心
太刀7本とは異なる動きも多いので、繰り返し練習してマスターしましょう。
始めのうちは、小太刀で受け流したり、擦り上げたりするのは怖いかもしれません。
打太刀も仕太刀も遠慮してしまうと、正しい形で無くなってしまい、また遠慮した方が怪我する可能性が高くなってしまいます。
三段まで合格されてきた皆さんですから、実力はあるはずです。小太刀の形も自信をもって取り組みましょう。
合格を応援しています。
以上、ケンドーショーダンでした。